病院や医療現場におけるDX推進事例を紹介!現状取り組むべき課題点とは?

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、病院などの医療機関は困難を強いられています。そんな状況を乗り越えるために重要となるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。医療・病院におけるDXとは、デジタル技術を活用して患者や社会のニーズに重きをおいたサービスを展開し、医療提供の問題を大きく解決するための変革のことを指します。

その医療・病院におけるDXの定義や課題を明確にするためにも、本記事では、病院におけるDXについて、内容や課題、DX推進事例を解説します。最後までご覧になることで、病院におけるDXが理解できるとともに、DXを推進にしていくためのヒントが得られるでしょう。

DX事例

医療・病院におけるDXとは?

まずは医療・病院におけるDXを明確にしましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を用いて業務の効率化や価値の向上を実現し、大規模なビジネスモデルの変革を意味します。このDXという用語はビジネスに対して用いられる傾向にありますが、実は病院などの医療機関にも浸透しています。

病院などの医療機関については、ビジネスのように他社との競争性や優位性に重きをおくというよりも、医療提供をいかに効率的に実施できるかが重要となります。また、ビジネスにはない概念「公平性」や「フリーアクセス」が求められます。

これらのことを考慮した上で医療・病院におけるDXを定義すると、デジタル技術とデータ共有を活用し、患者や社会のニーズに重きをおいたサービスを展開するとともに、経営モデルの変革をする上で医療提供の問題を解決すること、それこそが医療・病院におけるDXだといえます。

DXと一言でいっても、ビジネスと医療分野では意味合いが大きく異なることがわかります。ただ、いずれにしてもDXは迅速に取り進めていく必要があります。

医療・病院のDXで実現できる3つのこと

医療・病院におけるDXについては理解できたでしょうか?続いて、病院のDXで実現できる内容を解説していきます。DX推進後の医療現場がより明確になるはずです。

遠隔医療システムの構築

病院におけるDXの内容1つ目は、遠隔医療システムの構築です。ICT(情報通信技術)の進化は医療現場における変革だけでなく、オンラインによる遠隔医療システムを可能にします。

患者側がタブレットやスマートフォンを使用し、自宅からオンラインで受診できるようになることで通院の手間や負担が削減できます。それに伴い、院内感染のリスクを気にすることなく医療が受けられます。

ほかにも、地方在住の患者が都市部にある最新・専門医療を受けられるため、医療の地域格差が解消されると考えられています。

その反面、オンラインによる受診では映像と音声でしか情報を得られないため、対面での受診に比べて身体のわずかな変化を感じ取りにくいというデメリットも生じます。しかし、そのデメリットを考慮しても、ICT(情報通信技術)の進化による遠隔医療はとても魅力的です。

医療情報の共有化

病院のDXを実現すると、医療情報の共有化が見込めます。この医療情報の共有化は多くの病院で推進されています。

患者のレントゲン写真や薬の服用歴といった基本情報や検査結果をデータ化することにより、病院や診療所、薬局、介護施設などの間でスムーズに共有・閲覧できるようになります。

この医療情報の共有化が本格的に実現すれば、さまざまな問題が解決されると予測されています。例えば、初めて受診する診療所であっても医師が以前に通っていた病院のカルテを閲覧することで、その患者に合った適切な医療を施すことが可能です。

また、災害が起きて患者のデータを損失するリスクも防止できるため、事業を継続させていく「BCP(事業継続計画)」の観点からも、医療情報の共有化は非常に重要だとされます。このように複数の医療機関が連携して医療情報の共有化が実現すれば、患者側と病院側の両方にメリットが見込めます。

医療事務作業の効率化

病院におけるDXの内容3つ目として、医療事務作業の効率化があげられます。医療現場における業務は診断だけでなく、ほかにもあらゆる業務が存在しています。具体的には、膨大な数の医療物資の在庫管理、経理、レセプト(診療報酬明細書)作成などがあげられます。

これら事務部門が取り組んでいた業務は、RPAツールによって自動化できます。RPAツールとは、人間が手作業で行っていた業務をロボットが代行するツールのことです。

従来の業務をRPAツールによって自動化することにより、圧倒的な作業効率化を図れるほか、医療事務スタッフの負荷軽減や人的ミスの予防につながります。また、オンラインの診療予約システムを導入すれば、予約から会計までの流れがデジタル化されるため、さらなる効率化に期待できるでしょう。

病院におけるDXの課題2つ

ここまで、病院におけるDXの内容をお話しました。続いて、病院におけるDXの課題を2つ解説します。

現場のITリテラシー不足

病院におけるDXの課題1つ目は、現場のITリテラシー不足です。医者や看護師などの医療従事者は医療のプロではあるものの、AI、IoT、クラウドといったデジタル技術の知識はそれほど持ち合わせていません。

そのこともあり、最新のITツールが外部から導入されたところで、現場のITリテラシーが不足しているためうまく扱えないのです。ましてや、ツールを使いこなすだけでなく自らDXを推進するとなれば、相当な教育プログラムを行う必要があります。

単純な人手不足

病院におけるDXの課題2つ目として、単純な人手不足があげられます。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、医療機関の多くが医療崩壊に近い状態です。また、もともと日本の病院は約4割が赤字経営だとされており、全面的に人手が不足しています。

それだけでなく、時代とともに少子高齢化が進んでいる影響から、DX推進人材が生まれづらくなっています。このように人手不足という大きな課題を抱えているため、病院のDX推進は難しいのです。

病院や医療現場のDX推進事例3つ

病院におけるDXの課題は理解できたでしょうか?最後に、病院や医療現場のDX推進事例を3つご紹介します。DX推進事例から成功のヒントをみつけましょう。

情報を可視化するプラットフォームの実現

病院や医療現場のDX推進事例1つ目は、情報を可視化するプラットフォームの実現です。ソフトバンク株式会社はクラウド型サービス「HeLIP(Healthcare Local Information Platform=健康・医療情報プラットフォーム)」を展開し、医療現場に大きな変革を起こしました。

このプラットフォームを活用すれば各医療機関がシステムでつながるため、患者の基本情報や診療履歴をスムーズに閲覧できるようになります。また、別々の病院で診断した場合でも、患者の情報が病院同士で共有されていることから、必要としない検査を削減できると同時に診療の質を向上させます。

この「HeLIP(健康・医療情報プラットフォーム)」を実現した結果、患者側と病院側に革新的なメリットを生み出しました。医療業界の診断・治療においては情報収集がキーポイントであるため、情報を可視化するプラットフォームの発展は今後も期待されています。

「HELPO」を活用した大規模PCR検査の実施

病院や医療現場のDX推進事例2つ目として、「HELPO」を活用した大規模PCR検査の実施があげられます。2020年12月、福岡市は市内の医療施設、高齢者施設、障がい者施設の職員約11万人を対象にしたPCR検査を行いました。

その際、福岡市から委託を受けてソフトバンク株式会社のグループ会社である「ヘルスケアテクノロジーズ株式会社」と、ソフトバンクグループ株式会社の子会社「SB新型コロナウイルス検査センター株式会社」による合同チームが運営全般を担当しています。

従来のPCR検査は手作業中心であることから、あまり効率が良いとはいえませんでした。しかし、同チームはDXによってスムーズな検査体制を確立し、作業の大幅な効率化を実現しています。また、一部の業務を除くほぼすべて業務を一括処理できる独自システムを開発し、PCR検査をより円滑に実施しました。

ほかにも、ヘルスケアテクノロジーズが提供するオンライン健康相談サービス「HELPO」のスマホアプリによって、受検者が行う検査の予約や結果確認の効率化を図ったほか、検査に関する受検者からの相談や質問などをアプリ上で対応しています。

これらのように、独自システムと「HELPO」によるDXを用いたことにより、検査オペレーションの効率化と自動化が実現しました。自治体職員の負担をかけることなくPCR検査を実施できた成功事例です。

診療を効率化するAI問診の導入

病院や医療現場のDX推進事例3つ目は、診療を効率化するAI問診の導入です。AI(人工知能)問診は、タブレットなどの端末を用いて患者が症状や服薬歴を入力することで、紙を用いた問診よりも診療の効率化が図れます。

そのAI問診のなかでも、Ubie株式会社が開発したWEB問診システム「AI問診ユビー」はいままでの常識を覆しました。タブレットを用いて患者が情報を入力するだけで、病院側の電子カルテに内容が自動で反映されるというものです。また、患者が入力した情報だけでなく、それに付随した病名まで出る画期的な仕組みも搭載しています。

さらに、このWEB問診システム「AI問診ユビー」と病院側のホームページを連携させれば、病院に到着したころには入力した情報をもとに、問診などの一部工程を短縮することが可能です。

このように、問診表の記載から診療を受けるまでに発生していた待ち時間に対し、AI問診システムでは待ち時間を大幅に短縮できました。そのほか、医療従事者の業務負担が軽減されただけでなく、患者が病院に留まる時間を短縮させたことで感染防止の面でも非常に役に立っています。

まとめ

本記事では、病院におけるDXについて、内容や課題、DX推進事例を解説しました。

医療現場においては、医療の提供をいかに効率的に実施するのかが非常に重要です。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、さまざまな課題を抱えている医療現場では容易ではありません。

そこで医療・病院におけるDXを推進すれば多くの課題を解決に導きます。ぜひ本記事で解説した病院のDX推進事例を参考にし、病院におけるDXの事象を深く知るとともに、これから普及するDXの未来を予測していきましょう。

「What'sDX」編集部

執筆「What'sDX」編集部

これからDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうとしている、既に取り組んでいるみなさまのさまざまな「What’s DX?」の答えやヒントが見つかるサイト「What'sDX」の編集部です。