企業のDX活用事例を業種別に5つ紹介!成功から学ぶ3つのポイントとは?

DXとは、デジタル技術を用いた大規模な変革のことです。企業にDXを活用すれば、業務の効率化だけでなくビジネスモデルに変革や創造をもたらします。非常にメリットが大きいDXですが、実はほとんどの日本企業が「DX未着手企業」と「DX途上企業」のどちらかに含まれています。

しかし、すべての日本企業が成功していないわけではありません。そこで今回は、海外・日本企業のなかでDX推進に成功している事例を業種別で5つ紹介します。どんな企業がDXを活用しているのか、それを踏まえてDXで成功するポイントもみていきましょう。これからDXを活用する方の参考になれば幸いです。

DX事例

DXを活用できている状態とは?

まずはDXを活用できている状態を明確化しましょう。DXとは、デジタル技術を活用したビジネスモデルの大きな変革のことです。

しかし、経済産業省の「DXレポート2 中間取りまとめ」によれば、世界からみた日本企業のDX化は非常に後れをとっており、今後DX化を加速させていかなければデジタル競争に敗北してしまうと予測しています。

また、日本企業の9割以上が、DXについて知らない「DX未着手企業」、DXを進めたいが散発的な実施しかできていない「DX途上企業」に留まっていると明かされています。 このことから、日本企業のDX化を一刻も早く進めていかなければなりません。

とはいえ、ほとんどの方がDXの活用について深く理解していません。「DX化=IT化」だと誤解している方が多いのです。DXの本質はビジネスモデルの変革・創造であり、ITシステムを用いた業務効率化のIT化とは大きく異なります。なお、さきほどの「DXレポート2 中間取りまとめ」ではDX化に対して以下のように提言しています。

「素早く変革し続ける能力を身に付けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革すること」

つまり、DXを活用できている状態とは、デジタル技術を導入している状態ではなくその先にある企業文化(固定観念)を変革した状態のことだとわかります。その状態を確認するためにも、次項でDX推進事例を紹介します。

業種別:海外・日本企業のDX活用事例5選

DXを活用できている状態については理解できたでしょうか?その内容を踏まえて、海外・日本企業のDX活用事例を業種別に5つみていきましょう。自社のDX推進に活用するためにも、企業のDX化をより明確にイメージしてみてください。

教育:株式会社ベネッセコーポレーション

株式会社ベネッセコーポレーションは、通信事業を始めとした、教育、介護、語学など、さまざまなビジネスモデルに取り組んでいます。そのなかでもDX活用事例として、教育事業のDX化をご紹介します。

従来の進研ゼミでは、紙を利用して勉強する教育サービス「赤ペン先生」を提供していました。高い満足度を獲得していたサービスではあったものの、必ずしもユーザーのニーズを満たす教育システムではありませんでした。

そこで開発された新しいサービスが、タブレットを用いて学習する「チャレンジ タッチ」です。タブレットを用いて全面ペーパーレス化を推進し、専用アプリを使用することでゲーム感覚の勉強コンテンツの提供も行えるようになりました。また、子どもの学習状況が親のスマホで確認できるようにもなり、利便性だけでなくサービスへの安心感も増しました。

そして現在の株式会社ベネッセコーポレーションは、「こどもちゃれんじ」と「進研ゼミ」を始めとした、社内のあらゆる場面でDXを活用しています。今後さらなるサービス展開に期待が持たれています。

医療:大塚製薬株式会社

大塚製薬株式会社は、医療品や健康食品を主に販売している日本企業です。大塚製薬株式会社はどんなDX化に成功したのでしょうか?

大塚製薬株式会社が実現したDXは、LEDとIoTモジュール、スマホアプリ、それら3点の連動による、薬の飲み忘れを防止できる「服薬支援システム」です。医療とDXを組み合わせたことにより、これまでの常識をくつがえしました。

この「服薬支援システム」では、錠剤を入れるケースにLEDを搭載することで、薬を飲むタイミングでLEDが点滅。また、服薬状況をスマホに送信するIoTモジュールを取り付け、スマホアプリと連動させました。この3点のデジタル技術を連携させたことにより、薬の飲み忘れリスクを大幅に減少させたのです。結果として、病気による症状の緩和や再発防止につながりました。

さらに「服薬支援システム」は本人の飲み忘れを防止するだけでなく、服薬状況を家族や医者に送信することができます。より安心して生活を送れるようになったと同時に、服薬指導にも活用されています。

なお、服薬状況をデータとして収集できるようになったため、今後はこのビッグデータを活用した新たなサービス展開が期待されます。

金融:LINE株式会社

チャットアプリで有名なLINE株式会社では、個人の信用スコアを測定できる「LINE Score」を提供しています。「LINE Score」とは、ユーザーの年齢や年収、家族構成などの情報を入れることで100〜1000までのスコアを測定し、ユーザーの信用度を可視化するスコアリングサービスのことです。

クレジットカードや住宅ローンなどで参照される個人の信用情報はブラックボックス化されており、本来であれば確認することができません。そこで登場したサービスが「LINE Score」です。「LINE Score」ではスコアリング機能を活用し、ユーザーの信用度を信用スコアとして可視化させました。ビッグデータを用いることにより、信用スコアという新しい個人情報を生み出したのです。

日本ではまだ浸透していないサービスですが、中国はいち早くスコアサービスを活用しています。信用スコアが低いと航空券のチケット購入が拒否される、NPO法人の立ち上げができないなど、社会全体で信用スコアが重要視されています。日本でいつ運用されるかは不明ではあるものの、信用スコアが今後大きな変革を起こす可能性は十分考えられるでしょう。

製造:株式会社クボタ

株式会社クボタは、農業機械や建設機械などの製品開発・生産を行うグローバル企業です。製造業とデジタル技術のかけ合わせに成功しました。

株式会社クボタは3Dモデル・ARを用いたスマホアプリ「Kubota Diagnostics」を、サービスエンジニア向けに提供しています。この専用アプリは建設機械の故障箇所をスマホで迅速に確認できるというものです。従来であれば、建設機械が故障してから点検箇所や修理方法をみつけるまで時間を要していました。一方「Kubota Diagnostics」では、エラーコードや不具合状況を入力するだけで瞬時に故障箇所を確認することができます。また3Dモデル・ARの技術により、スマートフォンをかざすだけで故障箇所がわかる機能も搭載されています。

「Kubota Diagnostics」はサービスエンジニアの業務効率を大きく向上させただけでなく、カスタマーサポートの生産性にも影響を与えています。

通信:Spotify

サブスクリプション型の音楽配信サービスであるSpotify。いまとなっては当たり前に感じるサービスですが、従来の音楽サービスからビジネスモデルを大きく変化させました。

以前はスマートフォンに音楽を入れて持ち運ぶには、音楽を聞くためのCDを購入・レンタルしてダウンロードする必要がありました。この点がユーザーの手間と労力を要する部分であったため、Spotifyはそこに目をつけ月額定額制の音楽サービスを開始。インターネット上で音楽が聴き放題となり、通信事業に大きな変革を起こしました。多くのレコード会社がSpotifyに加わり、瞬く間に何百万曲もの音楽データが集まったことで大規模なサービスに成長しました。

また、Spotifyは音楽をただ提供するだけではなく、ユーザーの音楽情報をデータとして蓄積することにより、ユーザー好みの音楽を自動でレコメンドする機能も実現しています。このSpotifyの登場によって、音楽の概念は「所有するもの」から「共有するもの」に変化しました。

DX活用事例から学ぶ成功するための3つのポイント

ここまで、DX活用事例を業種別に5つ解説しました。最後にDX活用事例を踏まえた成功するためのポイントをみていきましょう。企業のDX推進を検討している方はぜひご参考ください。

明確なビジョンを持つ

企業のDXを成功させるためには、明確なビジョンを持つことが大切だといえます。明確なビジョンを掲げて内部だけでなく外部に共有することにより、会社の目指すべき姿がより具体的となります。DXの活用過程で社内環境が大きく変化したとしても、会社一丸となって正しい方向に進み続けることができます。事実として、前項で紹介した企業のいずれもが明確なビジョンを掲げています。

組織づくりの強化

企業のDX化は組織全体で取り組むため、経営陣1人でDX化を進めても成功しません。そこでキーポイントとなるのが組織づくりの強化です。

DXを進められる組織づくりの強化方法としては、働きやすい職場構築、DX人材の確保、マインドセットの構築、DX推進の共有などがあげられます。企業のDX化は長期目線で取り組むべき課題であるため、組織づくりを強化して土台を作りましょう。

顧客体験のデータ活用

DX化を成功させるためにも顧客体験のデータを活用しましょう。顧客体験をデータとして保存できるシステムを導入し、ユーザーがどのような行動をしているか「みえる化」します。

それによりユーザーニーズをより明確に捉えることができ、サービス改善の質を高めることができます。さらにビッグデータとして蓄積できれば、AIによるレコメンド機能を追加してサービスに対する満足度を高められるでしょう。

まとめ

多くの企業が「DX化=IT化」だと勘違いしており、DXの本質を見誤っています。DXはデジタル技術を導入している状態を指すのではなく、その先にある企業文化を変革した状態を指します。

本記事では、DXを有効的に活用している企業を紹介し、その成功事例を踏まえて3つのポイントを解説しました。自社のDXを本格的に始めるためにも、ぜひ本記事で紹介した成功事例を参考にしてみてください。

「What'sDX」編集部

執筆「What'sDX」編集部

これからDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうとしている、既に取り組んでいるみなさまのさまざまな「What’s DX?」の答えやヒントが見つかるサイト「What'sDX」の編集部です。